就労支援 リハビリ

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はじめに

一口に就労支援といっても、実に様々なケースがあります。
対象者様の障害像の違いも去ることながら、仕事内容や就労形態、職場のサポートの有無など、考慮することは多岐にわたります。また、通勤や就労を継続していく上での体調管理なども十分にサポートしなければならないですよね。
本当に、対象者様それぞれに個別的な支援が必要なテーマであると思います。

私の経験談から・・・

では、具体的にどのような内容の支援を行っているかを、回復期リハビリテーション病棟での私の経験をもとに紹介します。

ケース①:Aさん 男性 脳梗塞による右片麻痺、高次脳機能障害なし

Aさんの場合、最長1年半の休職が可能でしたので、回復期リハビリテーション病棟での入院期間をフルに活用し、出来る限りの能力の改善を図りました。
仕事内容としては、工場勤務で管理職をされており、パソコンを使用した書類作成や従業員の業務管理といったデスクワーク、様々な会議への出席、本社や関連業者への出張業務が主な仕事内容でした。右片麻痺のため右手でのパソコン操作は困難でしたが、高次脳機能障害が見られなかったことで、作業スピードはやや遅くなったものの、デスクワークは実施可能となりました。しかし、Aさんの復職において、「出張」できる能力の獲得がなかなかの難題でした。



「出張」では、新幹線などを利用されることも多いとお聞きしたので、屋外歩行や駅中などの人込みを歩く練習、電車やバスの乗車練習などを積極的行いました。実際に、新大阪駅にも行って練習をしたことを思い出します。


また、普段の通勤では自動車が必要でしたが、Aさんは右片麻痺を呈されていましたので、右足でのアクセル・ブレーキペダルの操作が困難でした。そこで、左足でアクセルが踏めるように、ペダルの改造などを自動車メーカーの方を含めて話し合いを行い、自動車の改造を行いました。その後、運転免許センターでの適性試験を無事終えられ、改造自動車での運転が可能になりました。

職場の方との連携に関しては、直接ご本人に会って面談もしていただき、医師を中心に病状の説明を行いました。その中で、職場の駐車場が敷地内の外れにあり、工場内まで歩いて移動する距離が長かったため、工場のすぐ隣に特設駐車場を設けていただくことを提案し、了承いただきました。
結果、Aさんは退院後約半年間は休職を継続し、在宅や外来でのリハビリ等を積み重ね、無事復職されました。

ケース②:Bさん 女性 くも膜下出血、運動麻痺はないが失語症・注意障害あり

Bさんの場合は、麻痺がほぼありませんでしたので、入院当初から独歩も可能で、動作能力は高い方でした。

Bさんの仕事の内容としては、営業職をされており、営業先での仕事が多くを占めていました。営業では、自社の製品などをプレゼンし、商談を進めることが必要であり、短くても1時間程度は相手方とのやりとりが必要とのことでした。そして、その内容をパソコンを使って報告書として作成し、提出するというものでした。

入院中は、仕事に必要な会話練習やスマホを利用しての電話・メール作成練習、パソコンを使用した文章作成練習などを中心にリハビリを実施しました。しかし、失語症においては、日常会話程度は可能なものの、電話での応対となると理解力が低下、喚語困難が強まったり、注意障害の影響で作業時間が10〜15分を越えると、疲労感が出現しパフォーマンスが低下したりといった症状が残存しました。

そのため、営業職への復帰は難しいことが予測されたため、入院中の早い時期から職場の方との情報共有を行いました。

まずは、職場の方にBさんの障害像を理解していただくことが重要でしたが、高次脳機能障害をご理解いただくことに時間を要したことを覚えています。失語に関しては、言葉の出づらさは比較的理解していただきやすかったものの、理解面の難しさや注意障害を肌で感じてもらうことに難渋しました。何回かご本人に会って面談していただくことと、Bさんの職場にはジョブコーチの方が在籍されていたため、ジョブコーチを交えてお話を進めていきました。障害者の復職において、ジョブコーチの存在は非常に大きなプラス因子になります。

その結果、これまでと同じように仕事をすることは難しいことをご理解いただき、配置転換が提案されました。Bさんは、パソコン作業ではこまめな休息は要するものの、簡単な文章作成やデータ入力は可能というプラス面をお伝えしたことで、ひとまずは事務職として配置転換し、様子を見ていくことで合意しました。退院後はすぐに復職され、ジョブコーチの介入の中で仕事を再開されました。

最後に

いかがでしたか?今回紹介させていただいたケースは、ほんの一例ではありますが、

  1. 休職期間、経済状況の確認
  2. 仕事内容の確認、対象者の能力開発・職業訓練
  3. 病院内での多職種連携
  4. 退院後の支援者や職場との連携

といったような、対象者様自身へのアプローチはもちろんのこと、病院内での専門職との連携だけではなく、退院後の支援者や職場の方との連携といった、個別的で包括的な支援が必要です。
2021年に施行された、改正「高年齢者雇用安定法」では、「70歳までの定年引上げ」もしくは「70歳までの継続雇用制度」などの措置を講ずる努力義務が新設されました。
今後、社会全体の定年がさらに引き上げられることで、病気や怪我によって障害を持たれた中で、就労支援を必要とする対象者様の数も増えていくことが予測されます。セラピストの就労支援における役割も、より重要なものになってくると考えます。

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